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中にキョウスケのものが入ったまま、揺られている。
ホテルではない、狭く固いベッドの上。
何度目かになる、キョウスケの部屋での行為に、アタシは慣れきっていた。
それでも、いつ来ても物で溢れた部屋は、寂しがりやキョウスケの心をそのまま映してるかのようで、笑ってしまいそうになる。
明日は一限からあるから、本当はイヤだったけど、来なかったら来なかったで機嫌が悪くなって、面倒くさい事になる。
それに、セックスする事は嫌いじゃない。
気持ちよければだけど。
必死な顔をして腰をふるキョウスケは、大型犬のようで、強く振り払えない。
可愛くて可哀想で。
仰向けで天井のシミを数えるのに飽きたアタシは、キョウスケの肩に腕を回す。
そして、耳元で「後ろからしてほしい」とねだる。
「本当、エッチな女だな」
と面倒くさそうに、でも嬉しそうに言うキョウスケ。
「だって、気持ちいぃ」
バカらしいと思うが、そんな素振りも見せず、感じているかのように声をあげる。
くっついている恭介の体温が、また上がったのがわかる。
反対にアタシの体温は、一度下がる。
アタシは後ろを向いて誘う。
「ねえ、我慢出来ないから」
と言えば、後ろで低く笑う声が聞こえる。
「どうしてほしいんだ?」
「早く、お願い……」
早く、お願い、終わってほしいの。
汗に混じって、またブルガリブラックの匂いが強くなる。
キョウスケの事もブルガリの匂いも嫌いじゃない。
ただ、違うと感じるだけ。
そんな都合のいい考えの自分に、思わず吐きそうになる。
アタシの望み通り、後ろから入ってくる圧迫感。
うなじにチュと軽く口付けられる。
「はあ、イイ匂い。興奮する」
それだけがアタシの武器だからね。
枕を抱いて背中を震わせていれば、それっぽく見えるだろうか?
男はイイよね。
ただ、腰を振って出したら終わる。
キスはさせない。
ただ、動物のように繋がる。
顔も見られない姿勢。
これが、アタシがキョウスケに出来る精一杯だと思っている。
ぼんやりと考えていたのが気付かれたのか
「ねえ、きもちい……?」
と問いかけられる。
「んっ、いぃ、すごい、きもち……あ、あん」
慌てて吐息のように、不誠実な言葉を吐き出す。
アタシはいつからこんなに、嘘つきになったのだろう?
「おれも、だよ……ッく」
終わりに向けて、中に入ってるモノのスピードがあがる。
さっさと終わるように、アタシは中を締め付ける。
「イクよ、イッていい……ッ?」
キョウスケの声が切羽詰まったものにかわる。
アタシは返事をせず、首を縦にふる。
低く呻く声をあげて、キョウスケは果て、そのまま覆い被さるように、アタシを抱き締める。
その腕も、まだ愛しく思える。
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