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第6章
家を出てJR仙石線 榴ヶ岡駅まで向かう
いつもはあくびをしながら向かうのだが、今日はいつになく緊張していて、あくびどころではない。
学校に着いたら、吉田に今までの事謝らなくちゃな……でも、吉田は俺のことを許してくれるだろうか? そもそも、どの面下げて吉田に謝りに行けば……
ええい、ままよ。男ならこういう時こそ勇気を出さなきゃならないだろ!
しっかりしろ、みのる!
右の拳を固く握りしめて顔を上げると、電車は小鶴新田駅に差し掛かっていた。
もうすぐだ…
学校に着くと廊下で吉田と会った。向こうもこちらを探していたようで、目が合った瞬間全身の毛穴から汗が噴き出すような、そんな感じがした。
今だ、勇気を出すんだ、みのる!
「おはよう、吉田……」
声を掛けられて吉田は一瞬俯いたが、何か決意をしたのか、しっかりとこちらを見つめて言った。
「おはよう、黒田くん」
いつもと違いしっかりとした声で吉田は応じた。
「…あの、今まで外人とか言って…イジメてゴメンな。お前が白人ハーフでイケメンで女子にチヤホヤされてるのが何だかムカついてさ……」
「こっちこそ……昨日は投げ飛ばしたりしてごめんね。……昨日は何だか夢を見ているみたいで……自分なのに自分じゃないみたいでさ……」
そう言うと吉田は頭を掻いて続けた。
「ハハッ、何言ってんだって感じだよね……でも、本当なんだ」
「あぁ、分かるよ。俺もそういう夢みたいな状態、味わったからさ」
二人の間に沈黙が流れる。
俺は最大限の勇気を振り絞って右手を差し出した。
吉田も右手を出して、俺の手を握ってきた
「握手がぎこちねーな。欧米じゃ握手なんて日常茶飯事だろ」
「欧米どころか本州から出たことないよ」
そう言って吉田はほほ笑んだ。
「そっか。それじゃ、しゃーねーな」
「さぁーホームルームの時間だよー二人とも」
振り向くと山内が立っていた。
「男同士の友情。いいねぇ、あたしゃこれでご飯三杯はイケるわ!」
「チビっ子はもっとご飯食べて大きくならないとな!」
俺がそう言うと山内はツインテールの頭をブンブン振り回して「チビっ子って言うなー!」とふくれっ面をして見せた。
「そうだ、来月の七夕祭さ、みんなで一緒に見に行かない?」
吉田の提案に「いいぜ、行こう」と応じた。
今日も仙台は暑くなりそうだ。
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