題5章

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題5章

 アラームが鳴っている。  スマホのアラーム…聞き覚えのあるアラーム音。自分のスマホだ!  瞼を開けると薄暗いながらも見覚えのある自分の部屋。  「も、元に戻った!?」  居ても立っても居られない。俺は布団から飛び起きると、自分の部屋を出て階段を駆け下りた。  あまりに慌てて階段を下りたので、残り一段のところで足を踏み外して廊下に転んでしまった。激しい音が家中に響く。  幸い怪我はしていないようだ…そんな事はどうでもいい  今は俺が黒田みのるに戻ったか一刻も早く確認しなければ。  洗面所に駆け込むと、シャンプードレッサーの照明のスイッチを入れる。  鏡には目を見開き、顔を紅潮させ、鼻の穴を大きく開いた黒田みのるが映っていた。  鼻息で鏡が曇っていく。  「やったー!元に戻ったー!」  パジャマ姿のまま、シャンプードレッサーの前でガッツポーズをしていると、先ほど俺が廊下で転んだ時の音を聞きつけた両親が起きてきた。  「どうした、みのる?すごい音がしたぞ」  父にそう言われ「なんでもないよ」と答えたが、相当顔がにやけていたようだ。  「おまえ…なんでもないって、鏡覗き込んで何をそんなににやついてるんだ?」  「さっきのすごい音、どうしたの?」  母が続けて聞いてくる。  「ちょっと…転んじゃってさ」  そう答えて、もう一度鏡を覗き込む。  やはり鏡には黒田みのるが映っている。  「み、みのる。何か困ったことがあるのなら遠慮なくお父さんとお母さんに話しなさい。話してくれなきゃ分からないぞ」  どうやら息子の頭がおかしくなったと思われたようだ。  「大丈夫だよ。その……他人になってしまった夢を見てうなされただけさ。それで、慌てて鏡を見に来ただけ」  嘘はついていない。それに本当にあれは夢だったのかもしれない。
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