憧れに手を伸ばす

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 現在、閑は二宮の後継者として、二宮グループ会社の内でも重要なポストに就いている。だからこそ、二宮と染谷の婚姻が本当に必要なのかどうか、それを現実的に判断できる唯一の当事者のはずだった。  その彼が、異論を示さないということは、やっぱり避けられないから仕方なく、ということなのか。そして、相手が姉ではなく妹の方になった経緯に、彼は納得しているのか、知りたかった。  尋ねた琴音の表情は、戸惑いと困惑の入り混じるものだっただろう。閑はジェラートをすくう手を止めて、真直ぐに琴音に目を合わせた。 「……閑さん?」  数秒の沈黙の間、じっと視線を合わせていた彼は、琴音が困って眉尻を下げるとようやく笑った。 「そんなに困るほど、俺と結婚するのは嫌か?」 「えっ」 「今日会ってから、呆けた顔か困った顔しか見てない。まあ、無理もないんだけど」  ふっとため息を落とし、スプーンを置くと、彼は前髪をかきあげ後頭部でくしゃりと握る。それから数秒、考え込んだあと。 「……どうしても琴音が嫌だというなら、回避できなくもない」
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