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プロローグ
恋と友情の境い目が、もっとくっきりはっきりと解かればいいのに、と琴音は思う。
異性の友人と親しくなると、その境い目がとても曖昧でぼやけた線のように見えた。女友達といるより少し新鮮で、女友達と違うところで頼りに出来る。
中学、高校と同じ学校の同級生で、周囲からからかわれるほど仲が良くなった男友達がいた。中高共に同じバスケット部で帰り道も同じ方角、と親しくなるだけの環境もあった。
友人から恋人に変わったのは、高校二年の時だ。子供の頃から憧れていたふたつ年上のお兄さんが、姉と付き合っていることを知り大ダメージを食らった。子供の頃は三人一緒だったのに、ふたりだけがいつのまにか再会していた。その疎外感から来る寂しさもあったのかもしれないが、ちょっとした失恋くらいには、ショックだった。
それがきっかけで恋というものを意識しはじめ、男友達との近すぎる距離感に気づき、これまた良いタイミングで告白された。
仲良しだった男友達が恋人になり、三年付き合って、恋人らしいこともした。けれど居心地の良さはやっぱり友達に近いものがあって、そう感じていたのはお互いだったのだろう。
他に好きな子が出来た、と言われてしまった。
恋人っぽい雰囲気にはあまりならないなとは思っていたけれど、やっぱり彼から見て恋ではなく友情に後戻りしてしまったようだ。
後戻り、と言ってしまうとまるで退化したような気がして、そんな表現でいいのかわからない。が、友達から恋に進化したはずだったのだから、退化であっているのかもしれない。
けれど、別れてからしばらくして付き合いはじめた元カレと新しい彼女を見かけて、理解した。
見たこともない、蕩けるような表情をしていたから。
彼にとったら、きっと彼女が初恋なんだろう。
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