憧れに手を伸ばす

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 そこまで子供じゃないとついムキになる琴音に、閑は若干からかう口調であやしたあと、ふっと表情を和らげた。  そうして、穏やかな優しい声音が響く。 「健気だった。可愛らしくて、子供なりに守ってやらなきゃって思ったもんだよ」  じんわりと心に沁みる声でそんなことを言われては、思い出さずにいられなかった。子供心に、姉と比較されて傷ついたとき。夏のひとときに限っては、慰めてくれる手があった。  今、その手の主が、大人になって目の前にいる。 「おばさんとのやりとり見て、変わってなくて嬉しかった。可乃子と比べたんじゃない。俺は琴音だから結婚を考えてもいいと思った」  ……お姉ちゃんと、比べたんじゃ、ない。  その言葉が、思いのほか嬉しくて、自分がそれだけまだ子供の頃の感情を引きずっていたのだと気が付いた。
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