保護者(仮)

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保護者(仮)

僕が影子さんに誘拐されてから一週間がたった。 今日は早朝から影子さんの忙しない足音で目が覚めた。 「あれ、もう起きたの?まだ4時だよ?」 「……おはようございます。」 あなたの足音で起きたんですけど。 僕は不満な顔をしようと眉間にしわを寄せてみたけど、影子さんには全く効かなかった。 「ほら、今二度寝するわけにもいかないでしょ?顔洗ってきな。」 「はい……。」 目をこすりながら洗面台に向かうと、鏡にはブスっとした男子高校生の顔が映る。 歯磨きを済ませてリビングに戻ると、ちょうど朝食が机に並べられているところだった。 「影子さん、何か手伝いますか?」 「ん?じゃ、自分で食べる分ご飯盛って。」 机に並んだおかずは昨日の夕ご飯で出てきたカレーが含まれていた。 もちろん影子さんの料理にとやかく言える状態でもないし、カレーも嫌いなメニューってわけでもないし、手早く済ませた。 僕が学校に行く準備を済ませ、部屋を出ると影子さんが車のキーを持って玄関で仁王立ちしていた。 「送るよ。道分かんないでしょ?」 「ありがとうございます。」 影子さんの車に乗り込むと、朝のラジオがさわやかな曲を流している。 曲に合わせて影子さんの熱唱するのを聞きながら外の景色を見ると、大体10分ほどで学校の校舎が見えてきた。 すると、影子さんは中途半端な距離で車を停車させた。 「よし、行っといで。」 「あれ、ここでですか?」 てっきり校舎前とか気まずいところに留められてしまうと思ってた僕にとっては意外過ぎて思わず聞き返してしまった。 「だって、校舎の近くだと恥ずかしいでしょ?」 「まぁ、はい。」 「ほら、遅れるよ!」 なんて影子さんに急かされてカバンを押し付けられて僕は車から飛び出すように歩き出すことになった。 「それに、まだ顔バレするわけにもいかないしね。」 影子さんの声が喧騒の中に紛れて振り返ると、影子さんが車の中から手を振っていた。 そのサングラスを少しずらしてかけるのは、胡散臭いからやめてほしい……帰ったら苦情でも入れよう。 その日は教室に入ると、クラスメイトの視線がザッと僕に集中した。 とは言っても話すような友達もいないし、みんなが遠巻きに僕を見ては、こそこそと陰口を囁きあっている。それでも何か絡んでくるような人もいないし、それは幸いなのかもしれない。 僕は見て見ぬふりを貫いて、一日が立つのをひたすらじっと待った。 何より、一番恐ろしい時間になるのは放課後だから。 僕は時間が刻一刻と過ぎるのを見て体をこわばらせた。 そして放課後、僕は教科書をカバンに戻して、急ぎ足で校舎を出た。 あ、今日はいない。 周囲を眺めても危険人物たちの集団はいない。 良かった、1週間も休めば忘れられてえもらえるのか……。 僕が安堵して、校門を通り抜けようと足を速めた時だった。 「あっれぇ?宗太久しぶりじゃん!」 「ッ?!」
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