保護者(仮)

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聞きたくない低い声に体が反応する。 声の方を見ると、5人組の男子のグループの中で稲辺が親しそうに手を振った。 それを合図にしたようにぞろぞろとグループが僕を取り囲む。 魔の手が近づくというよりは、待ち構えていた……の間違いかもしれないけど。 目の前に並んだ5人の視線に背筋が凍る。 「どうしたんだよ、たくさん休んでさ~。」 「心配していたんだよ?」 相手のカバンを掴んで持ち上げるのは、心配とは言わない。 「久しぶり……ッ。」 腕を引っかかれるような痛みで息を詰まらせると、僕の服に貫通させていた安全ピンを引き抜かれたところだった。その手を視線だけで追うと、矢嶋の肉付きの良い手が僕の腕から離れて行ったところだった。 制服が黒いせいで血がにじんでも分からないけど、服の下には出血した感覚がじんわりと広がっている。 「心配させた罰としてさ、カバン持ってよ。なぁ?」 そう言って僕の前に5人のカバンが押し付けられて、僕はしぶしぶ荷物持ちをさせられる。 これが僕の日常だ。この帰りの行脚をしないと次の日の学校生活に悪影響が降りかかる。 例えば弁当がだめになることなんてしょっちゅうだったし、教科書を必ず持ち帰るのは……そう言う事だ。それもこれも僕が抵抗したことを次の日に仕返しとしてされるから、質が悪い。 担任に打ち明けた時もあったけど……、グループの中にいる学級委員長の松岡にもみ消されてしまった。 やっぱり僕はこうやって耐えるしか……。 「宗太?今帰り?」 すると、聞きなれてきた快活な女性の声がして僕はうつむいた顔を上げた。 声の先には、買い物の毎バッグをぶら下げた影子さんの姿があった。 「何だ、お前の知り合いか?」 肯定しようと口を開いたもののすぐに唇をかんだ。 質問を投げかけてきた稲辺の目は、まるで新しいおもちゃを見つけた子供のようにらんらんと輝いていたから。 影子さんにまで毒牙がかかるのは避けないといけない。 もし変な巻き込まれ方したら……あれ?影子さんなら大丈夫だったかな? と考えていると、影子さんは僕の目を見たままずんずん近づいてきた。 「こら、宗太。姉さんがわざわざ声かけたんだから返事くらいしなさいよ。」 「あ、ごめ……。」 「んもう!今日は買い物手伝えって言ったのに何悠々とずっぽかしてくれてんのよ。」 「へ?」 僕が影子さんの謎のアドリブに返事を返していると、5人は気まずそうに僕に持たせていたカバンを各々引きはがした。 「あら?もしかして、宗太の友達?」 「あ、えっと……「嬉しい!!あんたコミュ障なのによくこれだけの人数、ほんとすごいじゃない!!」あ……うん。」 影子さんは僕の頭をガシガシと撫でて、本当の家族のような振る舞いを見せた。 それに合わせて返事を返すと、影子さんはすぐにグループのみんなと話し始めてしまった。この人は夕方になってもタフすぎる……。 そもそも僕が何か言う前にグループの人たちに話しかけて行ってるし。 でも……正直助かったかも……。 そっと肩をなでおろしていると、いきなり僕の肩に稲辺の腕が回された。 「お前、姉さんなんていたのか?」
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