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第01章 『夢月れいかは邂逅する』
部屋の前方に用意された荘厳な祭壇には、色とりどりの生花がいけてある。
てっきりこういう時は白い菊だけを使うものだと思っていたので、少し驚いた。
花の甘い香りが漂う中、祭壇の目の前に座ったお坊さんが、聞きなれないお経を延々と唱えていて、時折、式に参列している人たちから鼻をすする音がした。
居心地の悪さを感じながら、その祭壇の中央に陣取っている遺影に目を向けると、恥ずかしくなるほどムスッとした、不愛想な自分の顔が映っていた。
もう少し愛嬌のある写真を選ぼうとしたが、アルバムに挟まっている私の顔写真はどれも似たようなものばかりで、仕方なくあの写真を選んだ。
やっぱり、遺影用の写真撮ってもらえばよかったかな……。
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