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生前葬を終え、自宅に帰って来たのは夕方だった。
ベッドの上に倒れるように寝込み、窓から差し込む夕陽から目を逸らすように、壁の方を向いた。
人の寿命は様々な要因で短くなることはあるが、長くなることは決してない。
あと一週間で死ぬという私の運命が、ここから逆転することは万に一つもありはしない。
家の外を走る車の音や、自転車のベルの音に交じり、生前葬で聞いたお母さんや妹の泣き声が、ずっと耳の中でこだましている。
どうして、こんな私のために、あそこまで悲しんでくれるのだろうか。
私は何者にもなれなかった、ただの一般人。
何一つこの世に残せたものなどない。たとえ明日消えてしまっても、社会になんの影響も与えない。
命の価値は、平等ではない。
その価値は、生前に何を成したかで決まる。
私のような何者にもなれなかった女子高生が一人死んだところで、世界が変わるわけではないのだ。
ならば、今更慌ててもしょうがないのである。
ピンポーン。
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