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一階からチャイムの音がして、お母さんが応対しているのがわかった。
それから少しして、コンコンと部屋の扉がノックされると、扉越しに妹の声が聞こえてきた。
「お姉ちゃん、お客さんだよ」
◇ ◇ ◇
玄関へ行くと、見慣れない一人の綺麗な女性が立っていた。
清潔な白いシャツの上から黒いスーツに袖を通し、ストレートの黒髪は肩口で短くカットされている。
右側でピッチリわけられた前髪は、目立たないように黒いピンで留められていた。
彼女は、二階から降りてきた私の姿を目視すると、居住まいを正すようにそっと足先を揃えた。
じゃりっと音が鳴った彼女の足には、黒いスニーカーが履かれている。
「夢月れいかさんですね、はじめまして。この度、夢月れいかさんの担当をさせていただく、『安息科』の鈴寧理亜と申します」
「安息科?」
「はい。寿命をお迎えになる一週間前になりましたので、その間に思い残すことがないよう、可能な限りサポートさせていただくのが私の仕事です。それで、夢月れいかさんの場合ですと――」
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