君の揺りかご

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“白の壁”が左右から迫る・・・ 身動きが・・・、 「ああ・・・」 夢だ・・・また夢を見ていた。 「お目覚めですか?」 「・・・うん、喉・・乾いた・・・」 三秒で起こせた上半身を 何分もかけて起こす。 「私の肩に」 「大丈夫、これ・・も・・・訓練」 そう・・・三週間前に脳梗塞で 病院に担ぎ込まれてこの姿。 幸い軽く済んだものの 左半身が鈍くてかなわない。   「お白湯にしてますからね」 妻が添えてくれた手を コップから離して カタカタと揺れる両手で口へ。 「お、凄い進歩じゃん!」 息子が病室へやって来た。 「毎日・・・来なくて・・・も  仕事に・・・障る・・・」 「まったく・・・毅然としたもんだ。  うっかりしてたら死ぬ病気だよ」 呆れたように息子は笑う。 そうだ、毅然・・・僕はこの言葉を 自分の信念にしている。 父親が真逆の人間であったから・・・。
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