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それは僕が進路を決める頃だった。 母は何か専門職に就きたいならその道の専門学校に、大学進学するなら3流ではなく国立の就職に有利な所を狙え。ダブルスクールする根性があるなら両方に通って手に職を、そして高学歴を手に入れろと進言した。 学費なら死んだ元夫だった人から手に入れた保険金があるから心配ないと不敵に笑った。 母はどこまでも現実的で冷徹な人間で、僕はひ弱で精神的にもろかった。 親の勘でそれを見抜いていた母はそんな僕を支えるつもりで厳しく鼓舞していたのだろう。 それがだんだん重荷に感じてきた僕は遠くの大学を選び一人暮らしをすることにした。 引っ越しの荷造りを手伝ってくれる母の背は心なしか寂しそうで手は皺だらけになっていた。 それを振り切るように僕は家を出た。
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