学生

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大学ではなるべく1人にならないように誰かの側にいた。 サークルには行かなくなりその空いた時間は家庭教師のバイトをすることにした。 とにかく志音に会わないため逃げ回るようにたくさん予定を入れる。 捕まったらまた戻ってしまうのはわかりきっていた。僕の心に罪悪感がある限り志音の好きに嬲られてしまう。それを悦んでしまう僕のおかしな精神状態を元に戻したくて必死だった。 ストレスのせいか偏頭痛が止まらない。どこか痛いとイライラして情緒不安定になる。 鞄の中でLINEの通知音が鳴る。 『体調悪い?』 広い講義室の端に座っている志音からだった。 『頭痛い』 短く返信した。こちらを見てなのにしっかり観察しているから油断できない。 関わりたくないのにうれしくなってしまう。僕はどうしていいかわからなくなった。 『鎮痛剤持ってるからあげる』 すぐに返信が来たが何を飲まされるかわかったもんじゃない、そう思って逃げるように部屋を出た。 眠ると優しく抱かれる夢ばかり見る。 近くで志音に触れられたらあっけなく陥落するだろう自分の心からも逃げたかった。その警告音が頭痛なのかもしれない。 その時心臓を何かに刺されたような痛みが走った。 体が小刻みに震えて息が苦しい。全身が心臓の鼓動を反響しているかのようにうずいて僕は座り込んだ。
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