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恐る恐るドアを開けてみた。
「新入生の人?」
机に足を乗せて行儀悪く座っている人に声をかけられた。不良だ。ずっとぬるま湯にいた僕が初めてみた異次元の人。
ブラウンに金メッシュの髪、派手なシャツにダメージジーンズ。
怖い!僕は足がすくんでしまった。
「なに?」
見た目に反して、といったら失礼だが話し方は普通だった。
「俺も新入生なんだけど、先輩方に留守番を頼まれてさ。見学?」
見学といっても誰もいないし、この人と二人きりになるのもどうも気まずい。
「あの、また出直してきます・・・」
「先輩すぐ戻って来るから待ってれば?なんかコンパの店予約するって言って出てったからその辺にいるよ、多分」
逃げようとした僕をさり気なく部屋に釘付けにした。
「俺、清水志音。志に音って書いて志音。あんた名前は?」
その人は足をおろして読みかけの本を置いてこちらを見た。
「黒川賢、です」
「よろしく~。ってまで入るか決まってないんだっけ」
清水志音。
僕はその名を知っている。
父の事故で被害者になった人の、息子だった。
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