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「姐さんは?」
「え、私?(姐さん!?)……えっ…と。私は」
名前を名乗ろうかと躊躇していると、桃李は、柔らかい声でズケズケと尋ねてくる。
「今日、旦那さんは?」
猫を撫でながら桃季さんは聞きにくいことをハキハキと詰問してくる。
「家族の見合いには参加しないのか?」
「家族?」
「ペットは家族の一員だ」
『家族』
私が今、もっとも忌む……重たい単位。
が、桃李さんは、黒猫を撫でながら
「嫁に出すなら、婿に説教のひとつも垂れなきゃな」と一人ごち、無礼にもさらに問いただす。
「で、あなたの旦那様は仕事?接待?ゴルフ?それとも自宅に引きこもり?」
流石に私の声も徐々に尖ってきた。
「この子は職場の上司の猫なんです」
早く終わらせたい。だが、5歳児の息子の前で怒鳴ったり失礼な態度は取れない。
(うまく話をごまかさないと)
そう思ってるのに!
「…俺が聞きたいのは、猫よりあなたの生活環境だ」
「なぜですか!」
ついに私は切れ、私は涙ぐんだ。
「カイの妊娠がわかった時には恋人と別れていました」「電話したら怒鳴られて音信不通」「私は未婚の母です!」「文句ありますか!?」
ハキハキと、立て板に水のごとく、小声で鬼ギレしてみせる。が、この美男子は黒猫をなでなでしながら私の息子を見る。
「…カイには、お父さんがいないのか」
「み、見ず知らずのあなたにとやかく言われたくありません!」
「結婚しよう」
「はああ!?」
(けっ、結婚しよう、ですって?!誰と?!)
「キャロラインとですか?」
「あなたと」
「は?ここは猫の婚活ですよ。それにカイを見ながら言うセリフじゃないでしょう?!」
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