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「わ、私、あなたのこと、好きぢゃないし!」
大声をあげると、ピンクのゲージの中にいるキャロラインも、ふーーっ!と毛を逆立てた。周囲も振り返ったりしてる。私は悪目立ちして反省した。
それなのに桃季さんはまっっったく頓着していない。
それどころか、淡々と冷静な声で……いや、むしろかすかに怒りすら混ぜた口調で、ハキハキと言い返してくる。
「俺も姐さんのことはカイのオマケと思ってる」「だが、カイと親子になるためには、オマケのあなたを妻に迎えねばなるまい」「ち。仕方ないな、オマケ姐さん。俺の嫁に来い」
(なあんですってえ?!)
友人であり、上司である華絵のために、猫をかぶって猫婚活に来ている私。それだけではない、常日頃、我慢に我慢を重ねている。バツゼロ子持ちなうえに、うちの子は特殊なのだ。肩身は当然狭く、いつも目立たないよう我慢している。
が。
(プライドもお金も名誉もない私に対してだが、あんまりだ!)
「猫の子くれるみたいな簡単な言い方しないでください!」
「は?」
なのに、桃李さんは被害者っぽい声をあげる。
「俺が!…にゃんこに、そんなかわいそうな扱いすると思うのか!」「にゃんことカイにだけは、父さんは苦労させない!」
(ちょっと待ていっ!)
「あなた…いつから、うちの子の父さんに?」
「今、この瞬間から」
きっぱりと言い放つ桃季さん。
何故か頷くカイ。
(そっくりなドヤ顔)
…私は頭を抱えた。
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