番外編 ぱんつのごむ

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お風呂場は、ジャングルだ… 如月一家は風呂場好きで、桃季さんの実家も凄いがマンションのくせに、ここんちも凄い。 (風呂場ってのはもっと……こう……普通のものでは……) せいぜい、アヒル隊長のオモチャがある程度が庶民の風呂場なはず…… が! 緑に溢れ、水槽の中には熱帯魚が泳いでいる。 そんなイレギュラーな別天地において。 「脱げばいいのに…」 タオルを巻きつけた私を見て桃季さんは溜め息をつく。 「夫の希望を打ち砕くなんて…」 「いいから桃季さんも巻いてください!」 「ウブだよね、奥さん…本当は処女?」 「カイを産みました!」 「皮膚から妊娠したんじゃないか?俺の胞子は空気中を漂い…」 小声で囁きながらもカイの世話はコマメにやいてくれる。 (私たちはこないだキスをした…) 子持ちで桃季さんのマンションに転がり込んだのは1ヶ月前… 5歳児とネコが見ている前でいちゃいちゃできない。 それに私は苦手なのだ、そういうの。 (だから、処女とかからかわれるんだわ…) 2歳年下だけど私は経験が殆どない。 前の彼氏とは強引にされ、妊娠がわかった頃には捨てられた… (だから、怖い) カイの頭をシャンプーで洗ってる桃季さんは、ちゃんと腰巻きタオルをしてくれた。 本人の努力で均整の取れている体は細身に見えて筋肉が綺麗に乗っている。 本人の努力でやわらかい動きができる指が優しく、カイの頭を洗ってる。 何気ないことのひとつひとつが桃季さんの努力で そして努力が大好きなのが、このタイプの自閉症の特徴だそうだ。 つまり我慢強さは脳にプログラムされている。 (が、我慢させてごめんなさい…) でも、無理! ああ、無理!
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