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ともかく、カイを引きずり、キャロラインの入ったゲージを持ち、私は走り逃げ帰った。
キャロラインの飼い主である華絵の家にだ。
華絵は仕事明けで疲れきった顔で、背中に肩こり予防ローラーを当てながら呆れた声を出す。
「なんじゃそりゃ」
ゴーリゴリとローラの音がする。相当凝っている。
「……なんじゃそりゃって……私が聞きたいですよ…」
私は上司で友人の華絵の前で溜め息をついた。
華絵は、頑固な黒髪天パの髪を自分で真っ直ぐに伸ばしながら、私以上のため息をつく。
「まあね、しっかりしたダンナがいたら月季花の苦労はかなり改善されるよね」
「……」
「母ひとり子ひとり」
「……」
「カイは軽度といえど自閉症。
児童相談所や療育センター…
これからの小学校入学といい、全部あんたが話をつけなきゃいけない」
「…うん」
華絵は私の頭を抱き寄せた。
「独りで何でも背負ったらダメだよ、月季花。
あんたは頑張り屋さんだから、あたし、いつも心配だよ」
キャロラインも「にゃあああ」と同意する。今はピンクのゲージから出してもらい、超ラブリーなベッドの上で、ふさふさの尻尾を揺らし、私を見上げてくれていた。
しかもキャロラインは、私を見て微笑んだ。
(ネコ…かわいい)
本当はネコを飼いたい。
でも安いアパートに幼児と二人暮らし…私にはこれが精一杯だった。
(カイ…。甲斐性のないお母さんでごめんね…)
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