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ーーー「ママ」は、この女の子のお話を、どのくらい信じるのだろう。
ゆきだるまと一緒に踊った、という話を
どこまで本気と思うのだろうか。
沙良がぼうっと考えながら歩いていると、
白い雪がふわふわ舞って、睫毛にのった。
雪を払うと
ふと、懐かしい気持ちに襲われた。
ーーー「ねえ、忘れちゃうでしょ」
ーーーーー「みんなそうだもの」
過去に、誰かがそう言った。
睫毛にのった、何かを
沙良が払った時に。
ーーーあれは誰だっけ。
沙良は記憶力には自信があった。
それでも、記憶のどこを探しても
声の主は見つからない。
ーーー雪、、、白くて、ふわふわで。
ーーーうさぎみたいに真っ白なーーー‥
ぷつん、と記憶の糸が途切れる。
思い出せそうで思い出せない。
もどかしさの中で、沙良は思考をやめた。
ーーー疲れた。
思えば最近は残業続きの日々だった。
ーーーせっかくの休日だもの。はやく休もう。
沙良は足を早めた。
一刻も早く家に帰りたくなったからだ。
ふわふわと舞う雪を、風が強く吹き上げた。
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