5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんね、ユラ。本当は、すぐにでも、また会いにくるつもりだったの。」
あの約束をした日、沙良はいつだってユラのもとに戻って来れると信じていた。
それができなかったのはーーーきっと
「こんなこと、あるはずないって、、、
ユラとの思い出、なかったことにしちゃってた。」
沙良の目からは涙が溢れていた。
ーーー私はなんて自分勝手なんだろう。
約束を勝手に忘れていたくせに、ずっと会いたかった、なんて思ってる。
本当は、ずっと、何年も
ユラを探していたような気さえするのだった。
ーーー「大人になるとみんな、無かったことにしちゃう。私のこと、いなかったことにしちゃうの。」
かつて彼女が言った言葉の意味を、
理解できるようになってしまった自分が悔しくて、沙良は泣くことをやめられなかった。
ユラの存在を夢か幻のようなものだと決め付けてーーー忘れてしまうなんて。
「泣かないで、サラ。
私は感謝してるんだよ。」
ユラは変わらず嬉しそうだったが、綺麗な声は本当に幻のようで、沙良は余計に悲しかった。
「私、忘れないって言ったのに。」
「サラの心のどこかに、私の名前があったから、ここに戻ってこれたんだよ。」
ユラは沙良から離れて、ふわりと回った。
「見て。この世界は、私の世界なの。」
「ユラの世界?」
「そう、私の世界。私の家、って言ったら分かりやすいかな。ここには私しかいないの。」
ーーーユラしかいない世界。通りで、何も生き物がいないはずだ。
「私はどうやって、ここに来たの?」
沙良が尋ねると、ユラが不思議そうな顔をする。
「知らないの?」
最初のコメントを投稿しよう!