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沙良がこくん、と頷く。
「じゃあサラは、ほとんど憶えてなかったのに、どうしてか私に会いたかったんだ。」
「え?」
「サラが強く、私に会いたいって思った時に、私の名前を呼んでくれればーーーいつでも会えるよ。私がこの世界の鍵を開けてあげる。」
「いつでも?」
「そう、いつでも。私はサラのことを、いつだって待ってるよ。」
綿毛の中で微笑むユラは白すぎて、見えなくなってしまいそうだった。
「ユラ‥、会えなかった間の話、聞いてくれる?」
沙良が尋ねると、ユラは桃色の瞳をキラキラと輝かせながら頷いた。
「うん、もちろんだよ。私もたくさん話したいことがあるよ。」
それから、二人はこれまでにあったことを伝えあった。
学生時代に好きになった男の子のこと。
車の免許をとったこと。
沙良の仕事について。
そして、姪の零菜が生まれたこと。
沙良が来なくなってからも、ユラの世界には何人かお客さんが訪れていたこと。
幼い子供ばかりで、大人になれば誰も帰ってこなかったこと。
だからこそ、サラが戻ってきたことがどんなに嬉しいか、ユラは力説した。
そして、ユラの家以外にも、周りにはたくさんの家があるということ。
話の盛り上がりついでに、沙良が"ユラはウサギに似ている"と言うとユラは少し不満そうだった。
夢中で話をしても、この世界の日が暮れることはなかったが、ユラが『夜になった』と教えてくれた。
「‥‥サラ、また来てくれる?」
最後に、ユラはそう聞いた。
「ふふ、もちろん。
忘れないよ。今度こそ。絶対にね。」
今度は確信があった。
沙良だけではなく、ユラにも。
2人はこれからいつだってそばにいられると。
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