夢にした昨日

2/14
前へ
/14ページ
次へ
外は人通りが多く、 皆が雪にはしゃいでいた。 「ねえ、ママ。昨日ね、まーちゃんがね、動いたんだよ。」 沙良の背後で、小さな女の子の声がした。 どうやらお母さんと話しているようだった。 「ええー?まーちゃんが?」 「そう!まーちゃんが!」 面白がるような母親の口調とは反して、女の子の口調は真剣だった。 まーちゃんとは一体なんだろうか。 沙良は、まるで謎謎でも出された気分だった。 普段は動かない生き物ーーー? 「まーちゃんが、どうやって動いたっていうのよ?」 「わたしね、まーちゃんとおどったの!こうやってね、こうやって、、、」 背後でばたばたと足を踏み鳴らす音がする。 「ーーーーあっ!」 グシャッ、と雪のつぶれる音がして、お母さんが「あぶない!!」と大きな声を出す。 どうやら転んでしまったようだ。 「もう!大丈夫?まーちゃんも笑っちゃうよ。」 「まーちゃんは笑わないよ。」 「そうね、まーちゃんは笑わないわね。」 「まーちゃんは笑わないけど、踊ってる時は楽しそうだったの。きっと、つくってもらえて嬉しかったんだと思うよ。」 「そうかもね。またみんなで作ろうね、ゆきだるま。」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加