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ーーーああ、そうだ。ユラはこの子だ。真っ白くて、可愛くて、儚げな女の子。うさぎみたいな女の子。
ユラと出会ったのは‥
ずっとずっと前ーーー
「ユラ!!!」
名前を呼びながら沙良が目を覚ますと
天井には青空が広がっていた。
「え?」
先程まで暖房をつけた一人ぼっちの部屋で
ソファーに座っていたはずだった。
それなのに、何故か屋外で寝そべっている。
そんな異常な事態にも、さほど恐怖を覚えなかったのは、
沙良がこの場所を懐かしいと感じたからだった。
「ーーー綿毛」
青い空には小さな綿毛が沢山舞っていて、雪のように見える。
沙良が上半身を起こして辺りを見渡すと、そこには一面綿毛の、真白な世界が広がっていた。
綿毛は、ゆらゆらと舞っては落ちて、
沙良の睫毛の上に乗る。
それを指ではらった時、沙良は確信に近いものを感じた。
ーーー私はここに来たことがある。
この風景を、憶えている。
この感覚を、憶えている。
そして、きっとここでユラに会っている。
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