5人が本棚に入れています
本棚に追加
「サラ?」
リン、と鈴を鳴らしたような
軽く優しく、響くような声。
背後から聞こえたその声に、沙良は憶えがある。
「ーーーユラ?」
目を開けて、上半身だけで振り返る。
足音も立てずにそこに立っていたのは、
幻かと疑うほど、白く儚い女の子。
「サラでしょ?」
彼女が小首を傾げると、真っ白い髪の毛がふわりと揺れた。
「ーーー綺麗な色‥」
沙良が思わず呟くと、女の子は宝石のような桃色の瞳を細める。
「サラは前も、同じこと言ってた。」
彼女はそう言って、ぴょん、と近づいてきた。
「久しぶり、サラ。
思い出してくれてありがとう。」
ユラは両手を広げて、沙良に抱きついた。
絹のような髪の毛が、沙良の頬をくすぐる。
ーーーああ、ユラだ。どうして忘れていたんだろう。
ユラの温もりが、過去を鮮明に思い出させた。
幼い頃、うさぎのような女の子と遊んだこと。
その子がユラであったこと。
あの日もユラは、最後に沙良を抱きしめたのだった。
沙良がぎゅっと抱きしめかえすと、
ユラは嬉しそうに笑った。
最初のコメントを投稿しよう!