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雪が降っていた。
沙良は、腕に抱いた可愛らしい桃色の紙袋が濡れてしまうのが嫌で、
雑貨屋の店内の窓から外を眺めていた。
「ああ、お客様!」
背後で大きな声がして、振り返る。
若い女の店員が、沙良に走り寄ってくる。
先程レジを打ってくれたアルバイトの店員だ。
無造作に付けられた名札には、「研修中」と手書きの文字で書かれていた。
「雪が降ってたんですね。ごめんなさい、気がつかなかった。紙袋にビニール、おかけしますね。」
「ああ、お願いしても良いですか?すみません。」
手渡した紙袋を、彼女は何故か嬉しそうに受け取った。ここの店の教育の賜物だろうか。
「贈り物ですよね。お友達ですか?」
店員はラッピングされた箱が入った紙袋を覗き込み、ビニール袋を広げながら沙良に尋ねる。
「姪の誕生日プレゼントなんです。」
「姪っ子さんですかあ!きっと大喜びでしょうね。」
「ええ、うさぎが好きなんです。」
箱の中身は、真っ白なうさぎのぬいぐるみだ。
姪の零菜は、明日で4歳になる。
うさぎが大好きで、味噌汁が大好きな女の子だ。
「できたっ。すみません、これで大丈夫です。」
手渡された袋にはビニールがかかっている。
今度は安心して外に出れる。
傘は忘れたが、プレゼントが無事ならまあいいだろう。
沙良はお礼を告げて、店を出た。
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