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君島が帰ったあと、一人リビングで缶ビールを開けた。
唇に冷たい缶の感触。それとは違った柔らかな感触を思い出して顔を覆った。
「……ちきしょ、変な声出たじゃねぇかよ」
あんな触れ方あるかっつの。
唇だけじゃない。シャツ越しにそっと胸元をなぞった手。いくら同種の男だからといって、誰でもいいわけじゃない。こちらにだって好みはあるし、あいつなんて全然……。
「ないわ、ナイ!! あんなの俺の手に負えねぇ……」
昔からあの手のタイプが苦手なのは、自分と真逆だから。
自分に自信があって、何でもソツなくこなしてしまうところも、口が悪くて少しばかり生意気でも世渡りはそこそこ上手いところも。
自分にないものばかり──だからあんな奴嫌いだ。あの男は、眩し過ぎる。
初めて会ったとき、本気でバカだと思った。
けど、本当は羨ましいと思ったんだ。ありのままの自分で、堂々と生きてるおまえを──。
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