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     会場となっている居酒屋に着くと、すでに大半の社員が集まっているようだった。今夜、居酒屋は貸し切りとなっていて、店内のどこを見渡しても見知った顔で溢れかえっている。 「空いてんの、あの辺りか」  三井が辺りを見渡して言った。  席順については特に指定がないらしく、皆思い思いの場所に座っているようだった。 「お、ラッキー!! あそこマイちゃん居んじゃん!! 筧、行こうぜ」  急にテンションの上がった三井に促されて、渋々後を追った。  マイちゃんとは今年の新人女子社員の中でもとりわけ可愛いと評判の女の子。男性社員たちがこぞってアプローチを繰り返しているとかなんとか。  この同僚も彼女狙いというわけのようだが、いかんせん競争率が高すぎるのではないか。 「げ! マイちゃんの隣、君島(きみじま)かよ」 「誰、君島って」 「知らないのか? 今年一番のイケメン新人。入社式の時から女共が色めき立ってたぜ?」 「へーえ……」  三井が視線を移した先を追うように筧は眼鏡のブリッジを押さえながら同じ方向にその視線を移すと、マイちゃんが男性社員たちに囲まれているのに対し、その君島も女子社員に囲まれていた。。 「……なるほど」  人だかりの中、頭一つ抜きに出ている長身。新人らしい真新しいスーツに身を包んだ端正な顔立ちの男。今流行りの塩顔男子とでもいうのだろうか。爽やかな笑顔は、確かにイケメンだと筧も納得した。
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