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「なに、一人でこんなとこに逃げて来てるんですか」  振り向いた先に立っていたのは、君島だった。 「……居場所わかるとか、エスパーかよ」  筧が眼鏡を押さえながら小さく笑うと君島が静かに隣に立った。 「どんなときも、筧さんを視界に入れてるんで」 「怖ぇえ。ストーカーみたいだな」  そう言うと、君島がふっと笑った。 「どうも居心地悪くてな。こういうとこのほうが落ち着くわ、俺」 「珍しく女の子たちに囲まれてましたもんね。筧さん普段仕事一本で取り付くしまないから、女の子たちここぞって近づくチャンス作ろうと群がって来てるんすよ」  そう言った君島の言葉に苦笑いを返す。 「──んなわけ」 「ありますよ。本当こっちは気が気じゃないっつーか」 「俺に近づく物好きなのはおまえくらいのもんだよ」  ドン、ドドン! ドン、ドン!  赤、青、ピンクに黄色。色とりどりの花火が夜空を彩る。  隣に立つ君島が、ガラス窓越しの花火を見つめたまま言った。 「他の女共にチヤホヤされないでくださいよ」 「……チヤホヤされてんのはおまえだろ」 「つか。こんなカッコ悪いこと言いたくないんですよ、ホントは。──でも、言わずにいられない。誰にも渡したくないとか、そういう思考になる自分がキモくて吐きそうです」  そう言ってこちらを見ずに、両手で顔を隠した君島の横顔が遠くで光る花火の光を受けて真っ赤に染まった。
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