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「……ちょっ、待っ、……おいって!」
部屋に帰るなり、目の色を変えた君島にベッドの上にあっという間に押し倒された。普段、押し倒す専門で押し倒されたことなど皆無に等しい筧にとって、その抵抗感ときたら尋常じゃない。
「……い、いきなりすんのかよ!?」
「しますよ、そりゃ」
「シャワーとか」
「いや。まんまの匂いのが、興奮するし」
ニヤ、と微笑むこいつの顔を今ほど恐ろしいと思ったことはない。
「つか。なんでナチュラルに俺が下になってんだよ!!」
「だって、俺下の経験ないですし」
君島がそう言いながらテキパキと服を脱ぎ、あっという間に自分も半裸にされてしまった。
「お。筧さん、鍛えてんだ? 意外と割れてる」
「そりゃ──、じゃなくてだな!! 俺だって下の経験ねぇんだよ!! つか、俺が上でもいいだろ!!」
筧が主張している間、君島は飄々とした顔で残りの服を脱ぎ、あっという間に下着一枚になった。
「ここは、若者に譲ってくださいよ。もう爆発寸前なんで」
君島が示した下半身に目をやると、すでにやる気満タン。
「はぁっ!? ──何ですでにそんなになってんだよ!」
「タクシーの中で、筧さんの指擦りながら、あんなことやこんなこと妄想してたらこんな具合に。渋滞、拷問でしたね、マジ」
「どんな想像してんだよ!」
「するに決まってんでしょ、好きな男隣に居たら」
「おまえ、やっぱ頭のネジどっか飛んでんじゃねぇの!?」
なんつーか。今更だがいろいろと激しく後悔。とんでもなく早まったかもしんねぇ。
「ねぇ。ちょっと大人しくしてくんないかな、筧さん」
「大人しくできるか、ヤルかヤラレルかの瀬戸際だぞ!?」
「大丈夫ですって、俺上手いんです。ちょっと試さしてよ、無理なら途中でやめるし」
「それ、男の常套句! 途中でやめれる男がいるかっ!!」
さっきからムードゼロ。色気皆無。
男同士で色気もへったくれもないかもしれないが、ここまでドライなのも珍しくないか?
「……優しくします。ちゃんと気持ちよくしたいんで、無理させません」
「お、おまえ、狡りぃ!!」
そんな綺麗な顔で、しかもそんな真剣な顔して言われたら。
「とりあえず、キスしていいですか?」
今までお伺いなど立てたことなかったくせに、急に可愛いことするとか卑怯だろ。
次第に深くなるキス、高まっていく息遣いと興奮。君島の手のひらがスルリと背中にまわり、その細い指が身体の中心線を下へ下へとなぞって行く。
「……ちょ、な」
「ココ、少しイイでしょう?」
「……ぃ、ちょっ、……ふぁっ、あ…」
君島の指の動きに自分でも生まれて初めて聞くようなオカシナ声が出て、あまりの羞恥に顔を覆うと、それを引き剥がした綺麗な顔の男のキスが妙に優しく額の上に降って来た。
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