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急に入口のほうが騒がしくなり、何事かと様子を伺うとどうやら社長が到着した模様。
そのへんに固まって雑談をしていた社員たちがそそくさと席に着くのに倣い、筧も三井に促された場所に座った。
三井が筧の脇腹を突きながら嬉しそうに笑ったのは、例のマイちゃんの向かいの席をちゃっかりしっかりゲットできたからだろう。
筧の向かいには、例のイケメン。筧が不躾な視線を向けると、まるで少女漫画のヒーローのような爽やかな笑顔を返された。
──胡散臭っ!!
筧はげんなりとした顔を隠しもせず君島から視線を外した。こういういかにもなイケメンは昔からどうも苦手だ。
社長の挨拶を経て、乾杯へ。それぞれ手元のグラスを返し、テーブルに先付けされた瓶ビールを手に取った。
「どうぞ」
向かいの君島が瓶を掲げ、目で筧にグラスを持つよう促した。
筧が「どうも」と小さく返事をしてグラスを差し出すと、君島がそのグラスをビールで並々と満たした。
筧も同じように視線で促すと、それに気づいた君島が新人らしく少し恐縮したようにグラスをこちらに傾けた。
「今年入社の君島です。よろしくお願いします」
小さく微笑む笑顔から溢れ出るイケメンオーラ。こちらもお愛想で笑顔を返す。
「営業部の筧だ。宜しく」
この男が来週の人事でどこの部署に配属されるかは知る由もないが、仕事以外では接点どころか共通の話題さえ見つけることが難しそうな別人種。
お決まりの挨拶だけを交わして、社長の乾杯の発声に合わせ互いのグラスを軽く鳴らした。
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