雪どけの夢

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雪どけの夢

 したり――と、頬に優しい感触。冷たくて、心地いい。 「あっ、雪だ。」  誰に伝えるでもなく呟いてみると、白い息がぽっと飛び出た。  目が覚めると、雪がはらはらと降っていた。  力強く根を張る植物の頭に、薄く雪が降り積もってきらきら輝いていた。  小さな小さな幸せだな、と彼女は思った。  いつもは見逃してしまいそうなことでも、今は嬉しい。  空を仰いでみる。すると、たくさんの真っ白な冬の花。たくさんの幸せ。  ゆっくりと、また白いお花が近づいてきて、今度はそれが私のおでこに触れた途端――。 「冷たく、ない。」  その不安は、幻想の中にいる彼女を一瞬にして現実へと引き摺り戻した。  身体中が熱い。焼け死にそうなほどに。  何が起こったのだろう。私はどうして泣いているのだろう。  空を仰いでみる。先程までの雪など希望ほどもなく、塵灰が私を嘲笑うように踊り狂っていた。  何もかもが美しく見えたあの世界は、雪のように溶け去って消えていた。  爆弾でも降りそうな空模様の下、我先にと逃げ惑う人々の悲痛な叫びが、彼女の鼓膜を引っ掻き回す。  そんな、絶望。  瓦礫に押しつぶされた彼女の足は水風船のように呆気なく破裂していて、立ち上がることすら許してくれなかった。  涙すら枯れ失せて、彼女は身体が灰と化す時を待っていた。
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