永年保護室

3/7
前へ
/7ページ
次へ
 目が覚めたら白だった。  身体のそこら中が痛かった。下半身を見やると生きてる実感が沸いた。右腕と左脚にギブスが巻かれているのを、楽観的に、助かった、そう生きていることだけに感謝した。しかし、全身隙間なく包帯を巻かれている。俺はそんなに重体だったのだろうか。  病院なのだろうか?  しかし、それは半分否定形に近いし、正解なのかもわからない。病院といえば、白いイメージがある。だがここにいる俺の部屋は全て白と黒で統一されていた。机、ドアノブ、着ている患者服、花瓶に挿された花、パイプ椅子、この部屋に他の色はなかった。大きなものから細かな物まで、他の色は排除されていた。白塗り化粧の下地と日本人固有の黒、他に色はない。  ここは、まさか。 『更生不可能な少年、少女は真っ白な部屋に送られてそのまま死ぬまで出られないらしいちゅう話だよ』  そうなのか。俺はもしかして。 「佐久間‼︎ 佐久間どこ行った」  部屋に俺の声が響いた瞬間だった。扉のドアが開く。 「ようやく目が覚めましたね。ご飯はあとからにするにして、血圧と脈を測らせてください」  理解を示せない。  言っている言葉がではない。  入室者は白の防護服をつけていて、顔の部分も真っ白なスモークガラスで表情が見えない。 「なっ、なあ、ここはいったいどこなんだ?」 「今はただ落ち着くことだけを考えてください」  血圧と脈拍は高ぶってるに違いないが、スモークガラスの面からは表情が見えなかった。帰ろうとすると、俺は追いかけた。ドアを開けると同じような格好をした(だが屈強な恐らく男が)奴が待ち受けていて、仕方なく部屋に戻るしかなかった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加