永年保護室

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 一週間経って、父と母は訪ねて来なかった。  もう早く死んでしまいたかったが、気かがりが一つある。  朝の検診が来た。 「なあ、一つ聞いていいか」  俺は丁寧に血圧を測っている人に問う。相変わらず表情は読み取れない。だが空気感はいつも同じ人のようだ。 「俺が事故を起こした相手はどうなった?」  それは恐る恐るの質問だった。窓もないのに風が吹いたような気がした。 「同じ病院にいるわ」 「病院? ここは病院なのかーーいや、容態はどうなってるんだ」 「車は廃車だけど、命に別状はないわ。後遺症は事故だから後のことは分からないけど、今のところは無さそうよ。さあ、答えたから私はもう行くわね」  同じ病院にいて、無事ーーではないが、事故の割に悪くない、ただそれだけのことで俺は安堵した。この無機質な部屋で唯一の救いだった。何の目印もないこの空間で希望の光が見えた気がした。そう人が道を進むためには道標が必要なのだ。例えば標識のない道路が存在しないように。そう車は道なりに進む。  そこで俺はハッとした。  ドアが完全に閉まる前に俺は女性(恐らくは看護婦)に声をかけた。 「すまないが、明後日、被害者にあって詫びを入れたいんだ。その旨を伝えてくれないか? あと母親にも謝りたいんだ、色んな人にも。白い携帯で画面は見ないから通話させてくれ。俺はこんな自分を変えたいんだ」  看護婦は顎を一度引いて出ていった。
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