永年保護室

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「ごめんね、裕太。ごめんね」  俺はその悲痛な、涙声に、応えた。 「母さん、起きたよ、俺こそごめん」  きつく巻かれた包帯越しからでも母の手の感触がよくわかった。 「ああ、裕太〜‼︎ 良かった。もう起きてくれないかと」  横を向くと母の顔は泣きぼそれているのだろうけど、スモークガラスによって遮られていた。こんな境遇を呪いたい。 「私があなたを恐れて叱らなかったから、だから……こんな」 「母さん、俺の体はどうなったの?」 「あなたはね、事故の後遺症で白と黒以外の色を見るとパニック発作を起こすようになったの。心理的な治療と報告は身体と事故のショックが和らいでからに決まったから、本当のことが言えなくて」 「そうなんだ……でも仕方なかったんだよ、母さん。俺、馬鹿だからこんなにならなくちゃ分からなかったんだ」 「でも、こんなことあんまりよ‼︎」  母は神様に嘆願しているように泣き続けた。 「いいんだ。それだけ人を傷つけたから。それに治らないわけじゃないんでしょ」 「そうだけど、いつ治るかは……」  俺の事故は、今回は、こうなっただけで、無かったら無かったで次があっただろう。 「白と黒、もうどちらに染まることもないけれど」  せめて両方を背負って生きてみたい。
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