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「まさか泣くとは思わなくて……ビックリした」
「だって……本だけでも嬉しいのに、こんなに可愛いネックレスまで貰えるとか。もしかして、ホワイトデーと誕生日で二つですか?」
「そうだな。どっちがどっちっていうのは、平井で決めてもらっていいけど」
先輩、アバウトです。でも、この際どっちだっていい。どっちでも嬉しいことに変わりはない。
「つけていいですか?」
「……い、いいけど」
私はそっとネックレスを箱から出して、首に回す。手探りで留め金をかけようと四苦八苦していると、先輩がおもむろに立ち上がり、私の背後へ回る。
「先輩……?」
「じっとして」
先輩は後を引き取り、金具を留めてくれた。
どうしよう、今にも心臓が飛び出してきそうだ。
「誕生日、おめでとう」
ふわっと突然耳に飛び込んできた先輩の声に、私はビクリと身体を震わせる。勢いよく振り向くと、先輩は背を向けていた。
わかっている。先輩は見られたくないのだ。でも先輩、やっぱり隠しきれてません。耳が真っ赤だし。
見惚れるようなイケメンでかっこいい先輩だけれど、こんなところはやっぱり可愛いと思ってしまう。
「先輩、ありがとうございます」
精一杯背伸びをして、さっきされた仕返しをした。
耳元で囁かれ、先輩の身体もビクッと震える。思ったとおりの反応に笑ってしまうと、先輩がジロリと睨んできた。
「平井、オレで遊んでるだろ?」
「そんな、滅相もないっ!」
「いいや、遊んでる!」
先輩の被害妄想に、私はただただ笑うばかりだ。
でも先輩も人のことは言えない。私をいつも驚かせてるのだから。そう、嬉しすぎて泣いてしまうほどに。
「絶対母さんとじいちゃんのせいだ」
「……かもしれませんねぇ」
ヒョイと肩を竦めてみせると、またもや先輩が睨んでくる。しかしすぐにフッと表情を和らげると、くしゃりと私の髪に触れた。
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