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「まどかちゃん、いらっしゃーい!」
藤沢先輩の家に着くなり、お母さんのハイテンションに迎えられ、予想をしていたとはいえ、私はちょっと面食らってしまった。
「章臣の彼女が家に来てくれるなんて、こんな日が来るとは思わなかったわ! ましてや、それがまどかちゃんなんて最高だわっ!」
「いえ、あの、私も……嬉しいです」
「んもう、まどかちゃんったら照れちゃって。かーわいいっ!」
そう言って、ぎゅ~っと抱きしめてくる。
お母さんのテンションが高すぎて、ついて行くのに必死です……。
「おぉ、まどかさん、よぅ来たなぁ! これからも遠慮せんと来たらええ。なにせ、可愛い孫の彼女! まどかさんが章臣の彼女か。うんうん、彼女か。ええな、彼女じゃな」
おじいさん、そんな「彼女、彼女」と連呼しないでください……。嬉しいけど恥ずかしいです。
「二人ともうるさい! 平井が困ってるだろ?」
「ちょっと章臣、彼女なんだから「まどか」って名前で呼んであげなさいよ。ねぇ、まどかちゃん」
「え、いや……」
「そうじゃ! 男らしく名前で呼ばんか!」
それ、男らしいとかそういう問題でしょうか……?
先輩はというと、もうすでに疲れた顔をしている。苦笑いしながらも、その気持ちはよくわかる。先輩が「浮かれている」と言っていた意味が本当によくわかった。
「まどかちゃん、今日お誕生日なんですってね! お祝いしたくて待ってたの!」
「そうじゃそうじゃ、ごちそう用意して待っとったんじゃぞ」
二人はそう言って、ダイニングへと向かう。慌てて後を追うと、ダイニングテーブルにはごちそうが並べられていた。もちろん、ケーキも用意してあるという。
「うわぁ……わざわざ用意してくださったんですね。ありがとうございます!」
美味しそうなごちそうに、私もテンションが上がる。よくよく考えれば、好きな人の家族に誕生日をこうやってお祝いしてもらえるなんて、私はなんて恵まれているのだろうか。
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