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「遠慮せず、どんどん食べてね!」
お母さんの言葉に、私は勢いよく頷いた。
「はい、いただきます!」
こうして、藤沢家における、私の誕生日パーティーは始まったのだった。
とにかく、食べて飲んで、笑いっぱなしだった。お母さんとおじいさんのテンションについて行くのが大変だったけれど、それほど喜んでもらえているのだから、私は本当に幸せ者だ。
藤沢先輩も呆れながらも、時折見惚れるような笑みを見せるものだから、私の気持ちはあっちへこっちへと振り回され、大変なことになっていた。
付き合い始めたといっても、基本は何も変わらない。明らかに変わったのは、私と先輩のネクタイの色くらいだ。ただ、これがあるおかげで、周りはそういう風に認識をしている。なので、時々は意識するけれど、できるだけ意識しないようにしていた。意識すると、何だかおかしな方向へ行ってしまいそうだったから。
でも、お母さんとおじいさんがこれでもか、というほどに「彼女」を連呼するものだから、何となくこの言葉の響きにも慣れてきたような気がする。
それでも、やっぱりくすぐったい気持ちにはなるのだけれど。
「さ、ケーキも食べたことだし、そろそろまどかちゃんを解放してあげなきゃね」
「え?」
「そうじゃな。わしらばかりが独占してたら、章臣が拗ねる」
「拗ねないっ!」
速攻でツッコむ先輩が面白い。
こんなに素早く反応してくれるから、この二人は先輩を弄っているというのに。いちいち反応する先輩はやっぱり優しい。
「章臣、ここはいいから、まどかちゃんと部屋でゆっくりしてきなさい」
お母さんがそう言うと、おじいさんがすぐさまそれに便乗する。
「多少のことには目を瞑るが、あまり不埒なことをしては嫌われるぞ!」
「じいちゃん、うるさいっ!!」
さすがにおじいさんのこの言葉には、私も真っ赤になるしかなかった。
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