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「先輩……?」
ガシッと腕を掴まれ、それ以上動かせない。先輩の方へ目を遣ると、先輩はフイと横を向いた。
「まだ箱があるみたいなので、取りたいんですが」
「……帰ってから」
「なんでですか?」
「いいから。帰ってからゆっくり見ればいい」
訳がわからない。たぶんこの様子から、先輩はこの場であの箱を見られたくないのだろう。
しかし、そう言われてしまうと見たくなるのが人の性。私はジトッと上目遣いで先輩を見つめる。
「先輩、見たいです」
「ダメ」
「どうしてもですか? 家で見るのもここで見るのも一緒です!」
「一緒じゃない!」
「どーーーーしてもダメですかっ!?」
じーーーーーーー。
ひたすら先輩を見つめていると、やがて先輩が根負けして折れてくれた。
さすが先輩、やっぱり優しい。
「その代わり、オレは後ろを向いてる。その隙に見るならいい」
「……何だかよくわかりませんが、了解です。じゃ、後ろ向いてください」
そんなに恥ずかしいものなのだろうか。私は不思議に思いながら、先輩が後ろを向いた後にその箱を取り出した。
小さな可愛らしい箱にもリボンがかかっている。それも慎重に外し、そっと箱を開けると──。
「!」
そこにあったものを見て、息が止まりそうになった。
箱の中には、天使の羽がデザインされたネックレスがある。羽と小さな石がついていて、透明感のある淡いブルーのその石は、アクアマリン。……私の誕生石だ。
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