ハデス車を買う

11/20
前へ
/21ページ
次へ
ホーイホーイ! 莉里の声がジャングルに響き渡り、次いで、ジャングルが震えた。 島原達は、膨大な数の獣に取り囲まれていた。 「んん?あれ?まだこの状況でこの統率された動きは?」 数千頭の大型哺乳類、中型小型を問わずほぼ完璧に整列した動きは、ただ事ではなかった。 「リーダーがいるはずなのよさ。出てくるのよさ!」 茂みにヒョコっと耳が立ち、現れた子犬ちゃんが莉里に飛び付いてうなじをクンクンした。 「きゃあ!くすぐったいのよさ!って、あんたは」 「んー。リリちゃんいい匂いする。隙あり」 「ぎゃあ!おっぱい触るなよさ!何してるのよさここで!メル坊!」 メル?さっき名前が。確か。 ああそうだ。シーズー、いや、ウエストランドの首長の。 メルヴィン・パストーリ・エルネスト(九歳♂)は子犬ながらに莉里にメロメロになっていた。 「うん。ジャングル探検しながら友達探してたの。そしたらね、パパとママの匂いがして、気が付いたらこうなってた。ああリリちゃんいい匂い。クンクンペロペロ」 「よく莉里タソペロペロって言われてたけど、ホントにペロペロされるとは思わなかったのよさ。メル坊、神がいるのよさ。そこに多分莉里が会いたいトキもいるのよさ」 「神ってエラルとかガイアみたいな?そう言えばジャングルの奥にアフリカに帰って生きる道を探せって言ってる変な人がいたよ。ユノおばちゃんの匂いもしたよ」 何だその往年のプログレ気取りは。 「ああそれな?どの辺にいるのよさ」 「そんなに遠くないよ!案内するからおいでよ!」 尻尾をブンブンさせてメルは走っていった。 まるで尻尾を切る前のウェルシュコーギーのようだった。 「ありゃあ思った以上に影響を受けてるけどこんな奴なのよさ。ロック鳥貰ったのが縁だけどエロ犬の子は犬なのよさ。あん?メル坊の携帯なのよさ?着信はこれ押すのよさ?もしもし?莉里は莉里ちゃんなのよさ。あん?」 莉里は上を見やった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加