ハデス車を買う

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シルヴァヌスの障壁は確かに堅牢だった。 激しい衝撃で、シルヴァヌスの手から宝玉は跳ね、空中で砕け散り、キラキラと輝きながら風に散っていった。 そう。答えは空中にあった。 二つの火点から発射された二つの弾丸は、まさに刹那の時間差で交差して着弾していた。 「交差軌道と時間差。着弾の衝撃はさながらガンマーナイフのように宝玉の中央内部で交差して炸裂します。貴方の宝玉の影響力の外に、既にいたのです。狙撃手は」 要するに二発のライフル弾で行った二重の極みだった。 ピンヘッドショットの精密極まりない衝撃は、シルヴァヌスの守りを容易に貫き、宝玉を打ち砕いていたのだった。 「ば、馬鹿な」 「トキは勿論莉里は知ってたのよさ。父親が気になってパピィロックで飛来した、アースツーで2番目のスナイパーの存在を。同時に知っていたのよさ。パパはとっくに送り込んでいたことを。この馬鹿みたいな状況を打破する一手を。あんたを負かしたのはパパなのよさ。見るがいいのよさ。あんたを敗北させた相手を。莉里が何で観測手をしていたのか。誰に莉里の声を伝えていたのか」 島原は今気がついた。先ほど拾ったメルの携帯。それはスピーカーになったまま通話中で、電話をしていた相手はーー。 シルヴァヌスは見た。空中でこちらを狙う二人の影を。
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