ハデス車を買う

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勘解由小路流紫降の自宅は、田園調布から程近い多摩川沿いにあった。 ちょうど自動車教習所から帰った流紫降は、カスタムされたクラクションの音を聞いて立ち止まった。 クラクションはラウンドミッドナイトだった。 え?これは? 「おお。お帰り流紫降。小流降は元気か?じいじが車持ってきたぞ。最新式のキャンピングカーだ。これに乗って行こう。当然お前の運転で」 えー。うん。 「父さん。議員の仕事は?忙しいんでしょう?それに警備会社の顧問で管制だっけ?それをしてたんでしょう?」 「問題ない全部解決した。隊員の手配は向こう2ヶ月済んだ。有権者の陳情は全て電話一本で解決した」 それじゃあおっかないロシアの大統領だよ父さん。 「学校暇だろ?さっき確認した。免許取れたんだって?ちょうどよかったんで車は分解せず全部やる。一般市場価格で1億9000万くらいだ。世界で最初のレロレロ搭載車だ。サヨナラ原発と叫びながら爆走しよう。既に家族全員が乗り込んでいる。その証拠にお前の嫁の真帆おっぱいは既に座席にだな。抱っこ紐の中ですやすや寝ているのが小流降坊だったりする。大人しい子だな」 それじゃあ誘拐だよ父さん。 仕方なく流紫降は広い運転席に座った。 「坊っちゃま。全員シートベルトの着用を確認しました」 トキさんもいるの? 「トキは今回頑張ったんでガイドのポジションをやった。食料その他の積み込みも任せた。俺達家族の命はトキが握ってるって訳だ」 「流紫降君ごめんね。お義父さんに逆らえなかった。あっという間に拐われちゃった。小流紫降君なんかあっという間にお義父さんに抱かれてた」 まあハデスだしお爺ちゃんだからね。 「私も突然誘拐された。翡翠ちゃんを押さえられたら逆らえん。何かまた神がらみだそうだ。仕方なく乗り込まざるを得なかった」 碧ちゃん翡翠ちゃん抱いてスピーカーからは北山真(新●月)の鬼が聴こえていて。 「トキのミステリーツアー開幕なのよさ兄ちゃん!莉里はむらさきちゃんを抱いて幸せ一杯なのよさ!莉里とパパのラブは始まったばかりなのよさ!」 莉里ちゃん変わらないね。ほとんど学校に来てないよね?理事長の娘なのに。 「にーにー」 「にー、にー」 「にーにーしゅきー抱っこ」 三つ子ちゃん達。解ったよ。 「水色ちゃんおいで。母さんも元気で何よりです」 「流紫降くん。旅行を楽しみましょう。みずいろちゃんは助手席のベビーシートに」 「仕方がないね。安全運転で。行くよ」 「流紫降坊っちゃま、関越道へお向かい下さい。高速道路に乗ったら自動運転モードにしてこちらへおいでくださいませ。皆様でお茶にいたしましょう」 もう断りようもなく、免許取り立ての18才はハンドルを握ってアクセルを踏んだ。 やれやれ。早速いいように使われてるね。初心者に運転モニターをさせて貴重なデータをとるのか。 「ああそうだった。さっきジョナサンから電話が来たんだ。さっき産まれたそうだ。4人目が」 「そりゃあめでたいのよさ!ジュニアに会いたいのよさ!イーサンジュニアは莉里にメロメロになるのよさ!キラボシちゃん里帰りしようよさ!」 やれやれ。参ったね。最終目的地は。 「犬勇者はパパに自慢したいのね。三つ子ちゃんで先を越されたから」 驚いて助手席を見た。水色は、いつものあどけない表情で大好きな兄を見つめていた。 え?ーー水色ちゃん。まさか。 流紫降の戸惑いを乗せて、霊力炉レロレロ2号搭載のキャンピングカーは、高速道路を目指し、非常識な大家族を乗せてどこかへと走り去っていった。 了
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