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西の大陸、ウエスト・ランドに到着したジョナサンは、胸に飛び込んできた愛人の頭をなで回した。
「突然どうしたエメルダ」
「先生を感じて来た。嬉しいもっと誉めて」
ジャレつくシーズーだな。フワフワ猫っ毛の耳がピョコピョコしてるな。
「おっぱい押し付けるの禁止よエメルダ。ダーリンは私のよ」
「平等でしょう?先生私まだ産めるから」
「いや。そうじゃないエメルダ。空気読めお前」
「もう読まないし読むつもりもない。私は首長としてアカデミー国王にお願いする。子供作ろう?私準備出来てる」
フワフワ尻尾ブンブン降ってるな。完全に不思議系メスワンだこれは。
「とりあえず後にしろジョナサン。トキを探すんだろう?」
「ああそうだった。エメルダ。トキって婆さんを見なかったか?温泉宿の女将やってた」
「ん。見たよ。前は輸入に関する交渉しに来てアルスが泣きそうになってた」
あー。いたなアルス。エメルダの親戚筋で貿易省の役人やらされて泣きそうだったな確か。
「今回は森に行ったみたい。あの辺は珍しい生き物がいっぱいいるし。ジョナサン・ウッド・ドラゴンとか」
あの可哀想な奴か。マスタードトードもあの辺原産だったな。
「大丈夫なのか?あの辺は危ないのもいるぞ」
問題ない。ジョナサンにスリスリしながらエメルダは言った。
「最強のボディーガードを雇ったみたい」
ああああ。
「昨日いないと思ったら何やってんだあいつは」
ジョナサンはそう呟いたのだった。
珍しい生き物がたくさんおりますね。
サファリルックに身を固めたトキは、ジャングルを見渡して言った。
目の前では同じような格好のちっこい母親と、けったいな青い半不定形流動固形物がジャングルツアーを満喫していたのだった。
「何を探しているんでしょうか?トキさんは」
「インパクトのある奴じゃねえのか?ルイコスタ山脈とは違うがよ」
とりあえずタイリクガメはトキの好みに合わなかったようだ。
「やっぱりルイコスタの方がよかったんじゃねえか?モフモフがいいんだろう?」
「確かに、皆さまがおっしゃったような生き物は東の大陸におりましょうが、少々攻撃的すぎるようです。お嬢様のお誕生日に花を添える希少動物を探しに参りましょう。ユノさん、アルフォンスさん、よしなに願います」
「珍しくちゃんとした名前で呼ばれたトンニュラは元気一杯頑張るそうです」
「誰がトンニュラだゴラあああああああああああああああああああ!でっけえトカゲだどうする?!」
全長12メートルの大型爬虫類が舌をチロチロさせていた。
皮膚から分泌した体液を刺状に硬化させて獲物を貫き補食する、スパイクリザードだった。
「残念ながらお嬢様の好みに合いません。殺さず処理をお願いします」
え?スパイクリザードの声が聞こえたような気がした。
慌てて刺を生やそうとしたが、もう遅かった。遅すぎた。
首を掴んだユノは刺をものともせず、そのまま放り投げた。
「とう」
リザードは豆粒になって消えていった。
とうモンスターとゴラあモンスターは、勝手気ままに前人未到の生きては出られないという、アースツー最古のジャングルを呑気に斬獲していたという。
ジョナサンは、早くもやる気を失っていた。
何故かトキが擁したのがユノと解った瞬間、もうカタルシスを感じてしまって完全に帰宅モードに入っていた。
そもそも西のジャングルは、ざっと確認しただけでもアースツー最古の生命の揺りかごであり、およそ人類の立ち入っていいところではなかった。
でもユノだし。
多分地上最強生物エルダードラゴンの上に君臨する、まさに食物連鎖のぶっちぎりの頂点だし。あいつ等。
今ちょうど飛んできた巨大な四足爬虫類が地響きを立てて墜落。その後泡を食って走り去る様子を目撃した。
長さ五メートルくらいの尻尾が地面をのたうっていた。
通常の価値観だと大蛇だった。
「いたずらに生態系を乱すつもりはないようだがな。あしらい方が雑だ。極力標本を傷つけないのがフィールドワークの鉄則だ。あいつに教えてやらんと」
フィールドワークの先達は、素人の愛人に思いを馳せていた。
「原初のジャングルね。ユノが絡んだ以上、何か起きそうね。ああでも可愛いわこの子。一人ちょうだい」
「三つ子ちゃんは不可欠なのよさ。莉里の宝物なのよさ。大体おっぱい出ないのよさ。ママほどじゃないけど莉里並におっきいおっぱいしてるのに」
「すぐ出るようになるわよ。女王おっぱいはその時を待ってるのよ。ねえダーリン」
「それを言うなら首長おっぱいはとっくに準備出来てるし。メルが大きくなって首長おっぱいは吸われるのを待ちわびてるし」
紫を抱いたまま体を擦り寄せる女王に背後からおっぱいを押し付ける首長の姿があった。
どうでもいいがさっきからお前等が発情した匂いプンプンさせてて鼻が利かないんだが。
「ねえジョナサン。お迎え棒って知ってるわよね?昨日の夜なんかしつこいくらいだったし」
そして君は尻を擦り付けるんだね。
三人のメスワン達の濃密な匂いでジョナサンはクラクラしてきた。
暑いな。舌がヘッヘと出ていた。
ふと目を落とすと三角に尖った鼻梁の先に黒い豆粒のようなものがくっついていて、微かに湿り気を帯びていた。
え?これは?
「へえ。お前は何なのかと思ってたが、ウルフ・スピッツだったんだな。銀髪ワンコ、紫を返せ」
気がつけばジョナサンーーいやジョナワンは、三匹のメスワンに囲まれていたのだった。
「どうなって!って。お前も変わってるぞおおおおおお!お前ナマケモノになってるじゃねえかあああああああ!」
誰もが納得のいく冥王ハデスの姿だった。
ジャングルに、爆裂魔法の炸裂音がした。
「もう何なんですの?!何がフィールドワークですの?!虫ばっかりですわああああああああ!聞いてませんわ!こんなの!」
お馴染みの金髪縦ロールを振り乱して、アリエール・リトバール・エルネストは、群がる虫を魔法で吹っ飛ばしていた。
「大好きなしぇんしぇいの為にジョナサン・ウッド・ドラゴン以上に貴重な爬虫類を見つけるんでしょ?この前しぇんしぇいの隠し部屋見つけた時に、ビビってケージ薙ぎ倒して尻尾自切させちゃったモルドールドクトビトカゲの代わりに。新種を見つけてしぇんしぇいにいい子いい子してもらいたいんだよね。あんなカナブンに怯えて爆裂魔法はない」
「環境がおかしいんですの!そりゃあ私だって無害なカナブンがいればまあ。で済みますわ!あんな斑色のカナブンがテントの横の鼠の死骸のお腹から大量に出てくればああもなりますわ!文明に逆行するジャングルなど「爆裂ミサイルアリエールの鉄槌」を雨あられのように降らせてしまいたいですわ!」
「落ち着きなよアリエール。ベージュのサファリルックのアリエールのシュートパンツから見えるプリっプリのお尻に噛みつきたい。頑張って探そう。アリエールバラマダラドクトカゲを」
「アリエールローズリザードですわ!おかしな名前つけないでくださいましイゾルテ!」
イライラしながら歩きだしたアリエールの尻を見つめていた、性的に未だ迷走中のバイセクシャル愛人は、子供を二人産んですっかり安産型になったアリエールの尻から、一本の尻尾が伸びているのを発見した。
あれ?何このエロい尻尾。しぇんしぇいを感じて子宮がすっかり降りた発情臭。私女なのに、アリエールのお尻をカクカクしたくなってる。え?この匂いは?
はっとして振り返った王子系美女、イゾルテ・フレイア・エルネストの顔立ちは、どう見てもただの発情したメスワンだった。
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