怪物の最期

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怪物の最期

 その日、川嶋(かわしま)誠哉(せいや)の死刑が執行された。彼が犯した罪は、拉致監禁、強姦、そして殺人――当時14歳だった被害者加藤(かとう)美夢(みゆ)をSNSで誘いだして誘拐、そのあと数日にわたる身体的、性的暴行の挙げ句に死亡させ、その死体を解体して近隣地域に分けて投棄したのだ。  発見された被害者の遺体は、それぞれが何らかのオブジェのようにいくつかの部分を組み合わせて置かれており、そのどれもがひどく傷つけられていたという。また、臓器に関しては『創作の邪魔になる』という理由で取り除かれ、近隣の住民に『田舎から食材が送られた』といって振る舞われたのだという。  そのあまりにも猟奇的過ぎた犯行から事件は大きな話題を呼び、裁判員たちは満場一致で死刑を求め、一審、二審でそれは認められ、川嶋の責任能力を問う弁護士による上告も棄却されたことによって死刑が確定していたにもかかわらず、その執行には些か以上の時間を要した。  理由はいくつかあり、川嶋の弁護団や彼の行為に神秘性を見出だした一部の民衆たちによる抗議活動や、川嶋の犯行が果たして彼ひとりによってなし得たのかという疑問などが挙げられる。しかし、時間によってそれらが解決されることはなく、少しの謎を残したまま、刑は執行された。  そうして、現代の怪物と呼ばれたひとりの青年は消え去ったはずだった。
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