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証立て
嗚呼 ねぇ おまいさま おまいさま
いっそ一思いに この心臓を喰ろうてくれりゃ
愛しいと云わすのなら 心臓を喰ろうてくれりゃ
いっそいっそ心を刺すのなら
わっちの心臓を喰ろうておくれよ
どうか どうか おまいさま
この心臓を喰ろうておくれや
水鳥 木下闇 心中 証立て
主様の居らぬ世は苦界より地獄なりて
愛し恋し揺れる面影 陰行灯
灯火 鳴る夜 泳ぐ金魚
絢爛豪華 金襴緞子
繋ぐ糸より喰ろうてくれりゃ
蓮の上より今際の今生
罪も罰も被っては喰ろうてくれりゃ
主様だけにと一等甘い口づけを
てらりと照る紅よりも一等まっかな想いの丈を
南天呑んだら魔が去るか
七難呑んだら地獄が焼くぞ
腫れた惚れた 心の在処は目に見えぬ
真の心は 神仏縋れど目に見えぬ
おまいさまに出逢う前なら
孤独の月も何ぞ思わなんだのに
あゝ えぇ 出逢ってしまえば
もう戻れぬ
なれば一層、一層の事
一思いに どうぞどうぞ
わっちの心臓を一呑みにしておくれ
おまいさまと歩めるのなら
針の道とて極楽通ずる
不浄の業火も安寧の灯火に変わりゃ
閻魔様に抜かれた舌とて
蛇に成り絡み付いて交わりだす
あゝ ねぇ いっそ此処に地獄があると言わすなら
それは何処とて 心の中
わっち等の在りようが 罪と言わすなら
それは此の世の在り方が罪でしょうぞ
剣山 足裏 業火の道
外道 籠鳥 誠の愛
離れて飛んで おまえの元へ
心臓一呑み 苦界の外へ
あゝ ねぇ おまいさま どうぞどうぞ
わっちの心臓を呑んだなら
此の世の業火を掲げては 二人離れぬ赤い糸
そっと ぐっと手繰り寄せ 指先絡めて
頬寄せて 貴方の温もり 肌染ませ
修羅に堕ちて 二人道行 逸れぬように
きつく赤縄結わえては
いざいざ参らん 極楽へ
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