プロローグ

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プロローグ

見上げた空がとてもきれいだったことだけは憶えている。たぶん、夜に、この上なく夜に近い色だった。――逢魔が時というのだろうか。天辺がぽっかり空いている円形の塔の中。中央に置かれた象牙色の石棺に腰を掛けて、唯一外界と繋がるソコをねめつけるように仰いでいた。素足にひんやりと伝う湿った空気。落ちてくる白い靄。嗚呼、雲一つないくせに何が降るのか。本当に何か来るのかもしれない。いっそ、こい。哀しいことに女はソレを黄昏色の双眸に映しみた。
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