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「まーくん美味しいね」
俺の目の前にイカ墨パスタを食べる女がいる。顔は俺の好みじゃないけど、胸はでかい。
濃い化粧をした顔に手を当て言った。
「麻耶感動しちゃう」
俺はちょっと笑い外を見た。店はガラス張りで良く外が見える。
今にも雨が降りそうな空の下には沢山の人が歩いている。
身体を密着させるようにして歩くカップルに、部活帰りの学生、家族連れ。
俺らも幸せなカップルに思われているだろうか。
通りの向こうにはテレビが設置されていた。音こそ聞こえないものの字幕は付いていて充分楽しめる。
テレビではナマハゲの特集をやっていた。
俺はナマハゲを見ると思い出すことがある。
小学生の頃だ。社会の授業で祭りについてやった。
その時、教科書に載っていたナマハゲの写真を見た女子が「怖い」と言った。
それに便乗する様に男子が「バケモノじゃん!」と叫んだ。
先生は微笑みナマハゲの説明をした。
その後オカルト好きなクラスメイトが「バケモノはいるか」と尋ねた。
すると先生はこう言った。
『バケモノは——』
「まーくん? どうしたの?」
先生の言葉を思い出そうとしたが遮られた。
麻耶の方を見ると首を傾げフォークを握りしめていた。
「なんでもない」
そう返事をして水を飲む。
「はいあーん」
麻耶は歯を見せて笑いながらフォークでパスタを巻いて俺に差し出す。
彼女のもとへ顔を近づけると、プンと化粧品の匂いが立ち込めた。
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