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顔が歪まないように筋肉を使い無理やり微笑む。
「おいしいね」
麻耶は笑った。不揃いな歯が見える。
「まーくんもして?」
溜息を堪らえて、カルボナーラを掬い、「あーん」と言った。
彼女の顔が近づく。
鼻に化粧の匂いが立ち込め、むせそうになる。
必死で堪えながらスパゲティが無くなるのを待った。
そっと携帯を見ると別の彼女、カナエからメールが来ていた。
そっとズボンのポケットにそれをしまい、辺りを見渡す。
狭い店内は家族連れやカップルで賑わっている。
男の子2人の4人家族が座っているテーブルの向かいにトイレを発見し、立ち上がった。
「ちょっとトイレ」
トイレに入ると携帯を直ぐに開き電話の絵のアイコンをタップした。
ワンコールでカナエは出た。
「もしもし? メールした?」
「あ、誠! 今晩遊びに行っていい?」
「いいよ」
ご飯を食べたら麻耶とすぐ別れればいい。
カナエの顔は好みだ。
鏡にはニヤニヤと笑う男の姿が映っている。
俺は頬を叩いた。パーンという軽快な音が狭い空間に響いた。
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