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「ちょっと着付けを習おうと思って。
来年は僕が着せてあげますよ、夏菜さん」
と笑顔で言う雪丸に有生が、
「じゃあ、俺も習う」
と言い出した。
「来年は、俺が家で夏菜を着せてくる」
「いやいや、魔王様が着付けとか似合いませんよ。
第一、魔王様の腕力で帯とか腰紐とか締めたら、夏菜さん死んじゃいますよ」
「なにを言う。
俺は夏菜を抱きしめるときも、肋骨が折れないよう注意している。
力いっぱい抱きしめたいのを堪えて加減してるんだ」
そ、そうだったのですか……。
いや、まあ、私、骨は頑丈ですから、大丈夫だと思いますけどね。
って、もっと、ぎゅっとされたいなあ、とかって意味じゃありませんからね、と心の中で言い訳したとき、玄関からよく通る声がした。
「それ、藤原が自分で着られるようになればいい話では?」
お年賀らしい、小洒落た風呂敷に包まれた酒瓶を手に、地獄のスナイパー、指月が立っていた。
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