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勇者と仲間たち
「勇者様!勇者様!」
ドタドタと慌ただしい足音と共に宿屋に飛び込む衛兵。
「衛兵の旦那、どうされました?」
宿屋の主人は衛兵の慌てように驚き尋ねた。
「どうもこうもない。王様に勇者様がこの城下町に来られたことをお伝えしたところ、何故城にもてなさなかったのかとお叱りを受けたのだ。何としても急ぎ勇者様を城へお連れしなければ、私の首が飛んでしまう!主人よ、勇者様はどちらの部屋でお休みになられている!?」
「そうでしたか。いや、しかし旦那も間が悪い方だ。勇者様達は、少しこの街を見て回りたいとおっしゃって、荷物を置かれて先程出て行かれましたよ」
「な、なんだと?」
足の力が抜けてしまったのか、衛兵はその場にへたり込んでしまった。
「だ、旦那。しっかりしてくだせい。出て行かれたのはつい先程です。まだこの辺りにいるはずですよ」
「そうか、そうだな。いや、取り乱してすまなかった」
衛兵は主人に肩を借りながら立ち上がると、軽く一礼をし「もし、勇者様が戻る事があれば、私が迎えに来たことを伝えてくれ」と言いドタドタと城下町へと消えて行った。
一方その頃、勇者一行は、賑わう城下町の中を眺め歩いていた。
「いやはや、アリストロ国は世界でも屈指の大国と噂には聞いていたが、まさかこれほどまでに栄えた町が未だあるとは恐れ入った。わははは!」
豪快に笑いながら関心するのは、勇者一行で一番の力自慢、格闘家のクウ。
「おい、あまり馬鹿笑いをするんじゃないよ。お前の振る舞いは勇者様の品格を損ないかねん」
クウをいさめるのは、勇者一行で一番の剣さばき、女剣士のレイ。
「ふ、二人とも、け、喧嘩は駄目だよ」
おどおどとするのは、勇者一行で一番の魔力を持つ、魔法使いのエミル。
そして、そのような三人のやり取りを微笑ましく見守るのは勇者カイン。
カインは、三人と共に歩きながら皆に呟いた。
「クウ、レイ、エミル。ここまで来れたのも皆の力があったからこそだ。しかし、魔王を倒す冒険はこれから更に険しさを増すだろう。せめて、今この一時でもどうか、、、」
カインが何か言いかける前に、クウ、レイ、エミルは、カインの口の前に手の平を向けた。
カインを見る三人の眼差しは、力強く、カインはその眼差しに口をつぐんだ。
「そうだった。皆それぞれが覚悟の上、ここに集ってくれた。どのような時も気を緩めることなく、これからも共に行こう」
カインの言葉に三人は頷くと、勇者一行は城下町を見るのも程々に宿屋に戻ることに。
勇者一行が城下町に着いたのは夕暮れ時であったが、気づけば空一面に輝く星が顔を出していた。
夜になっても賑わう城下町を背に宿屋に着いた一行。
しかし、宿屋に入ろうとした時、何かがカインの腰辺りにぶつかった。
見ると、そこには一人の少年が。
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